原発の安全な廃炉への貢献
「知」を集結して取り組む。
福島第一原子力発電所(以下、1F)の過酷事故から13年余りが経過しました。燃料デブリの試験的取り出しが開始され、廃炉はさらに技術的難易度の高い工程への挑戦が始まる段階にあります。局面を打開する新技術の開発や予想外の事態への対応などのため、基盤研究の役割も益々重要となり、長期を要するこの難事業を引き継いでいくための優秀な次世代の育成も必須であることから、大学の果たす役割はさらに重要となります。
東北大学は、「原子炉廃止措置基盤研究センター(Center for Fundamental Research on Nuclear Decommissioning: 以下、CFReND)」を独立部局として2016年12月1日に設置し、本学の部局間を横断するメンバーにより1Fの中長期リスク低減に重点を置いた基盤研究ならびに人材育成に取り組んでいます。CFReNDは「廃止措置リスク管理技術研究部門」および「放射性廃棄物処理・処分技術研究部門」の2部門によりスタートしました。これらは、政府系の競争的資金を獲得して基盤研究を推進することを基本とする部門で、いわばシーズ主導型の研究を進める部門です。2020年4月には、「福島第一原子力発電所廃炉支援基盤研究部門(東京電力HD福島第一廃炉推進カンパニーとの共同研究部門)」を設置しました。この部門では、廃炉事業の実施主体である東京電力の技術者と本学エキスパートとの密接なコミュニケーションに基づいて現場ニーズを研究課題にブレイクダウンし、本学が有する広範な分野での研究ポテンシャルを活用して廃炉現場の課題を解決するための研究開発を行っています。つまり、現場ニーズ起点型の研究を実施しています。
CFReNDは、このような2種類の異なるアプローチを並進する組織体制を構築し、これら研究の場を人材育成にも活用しています。さらに、1F廃炉のために生み出された技術や知見を、通常の原子炉廃止措置にも展開していきます。CFReNDが運営する大学院工学研究科および情報科学研究科の『原子炉廃止措置工学プログラム』は、2017年の開設から2024年3月までに、111名のプログラム修了生を輩出しました。1F廃炉について学び深く考えた経験を持つ若者たちです。
福島第一原子力発電所から90km余りの距離にある本学は、地元の総合大学として、安全かつ着実に廃炉が進むために、基盤研究と人材育成の面から貢献すべく、息長く努力してまいります。引き続きご支援下さいますようお願い申し上げます。